最小権限の原則とは、「業務に必要な最小限の権限だけを与える」という考え方です。英語では「Least Privilege」とも呼ばれ、情報セキュリティにおける基本的なルールの一つです。
例えば、社内のファイル共有システムで営業部のメンバーが、経理部の給与情報まで閲覧できる必要はありませんよね。必要以上のアクセス権限をもっていると、うっかり操作によって重要なデータを消してしまう、あるいは悪意のある第三者に権限を使われてしまうリスクが高まります。
最小権限の原則が守られていれば、万が一、悪意のある第三者にアカウント情報が盗まれたとしても、攻撃者がアクセスできる範囲は限定されます。つまり、被害を最小限に抑えられるのです。防げるだけでなく、被害が出たときの広がりを抑える、という点でも効果的ですね。
最小権限を実現するには、「誰が」「どの範囲に」「どのくらいの期間」アクセスするのかを丁寧に見極める必要があります。例えば、特定の業務にだけ必要な権限であれば、一時的に権限を付与し、その作業が終わった時点で自動的に権限を取り消すしくみを導入するのも良い方法です。
とはいえ、ただ制限を増やすだけでは業務が滞ってしまいます。重要なのは、業務効率とセキュリティのバランスを取りながら、適切な権限を見極めていくこと。定期的な見直しも欠かせません。
「できることが多い=便利」ではなく、「必要なことだけできる=安全」。この視点をもつことが、セキュリティ強化の第一歩になるのではないでしょうか。
用語解説の監修:増井 敏克