ASV
読み方:エーエスブイ
正式名称:Approved Scanning Vendor
ASVとは、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)の要件に基づき、インターネットに公開されているシステムやWebサイトに対して、外部ネットワークから脆弱性スキャンを実施できると公式に認定された事業者のことです。認定はPCI SSC(PCI Security Standards Council)が行います。
PCI DSSは、クレジットカード情報を安全に取り扱うための国際的なセキュリティ基準です。この基準の中で、外部脆弱性スキャンは重要な要件の一つとされています。なぜなら、インターネットに接続されたシステムは常に攻撃の可能性にさらされており、その弱点を放置すれば不正アクセスや情報漏えいの危険が高まるからです。
ASVスキャンは、ASV事業者が専用のスキャンツールを使い、対象となるIPアドレスやドメインに疑似攻撃を仕掛け、既知の脆弱性や設定ミスがないかを確認します。結果はレポートとしてまとめられ、PCI DSSに準拠しているかどうかが判定されます。ここで「準拠」とされなければ、問題の修正と再スキャンが必要です。
ポイントは、ASVスキャンが単なる技術的検査ではなく「公式な証明」として扱われることです。つまり、認定を受けていない事業者のスキャン結果は、PCI DSSの要件を満たすものとは認められません。このため、カード会員データを扱う事業者は、必ずASVに依頼してスキャンを受ける必要があります。
よくある誤解として「ASVスキャンを通ればセキュリティは万全」という考えがあります。しかしASVスキャンはあくまで外部から見える範囲の検査に限られます。内部の脆弱性やアプリケーション固有の問題までは網羅できません。ですから、ASVスキャンはPCI DSS準拠の一部であり、日常的なセキュリティ対策や脆弱性診断と組み合わせることが重要です。
クレジットカード情報を扱う事業者にとって、ASVは「PCI DSS準拠への入り口」を守る存在といえるでしょう。もし自社が対象となる場合は、スキャンの実施時期や結果の提出期限をきちんと把握し、余裕をもって準備することが肝心ですね。
用語解説の監修:増井 敏克